統合ライブラリを使用した高度なライブラリ管理

 

回路図ライブラリには、フットプリント、シミュレーションやその他のモデルを添付させることができます。通常、これらの各モデルは、回路図ライブラリ以外のファイルに保存されています。PCB フットプリントは、PCB ライブラリファイルから供給されています。シミュレーションモデル(いくつかの例外はあります)は、モデルまたはサブサーキットファイルに含まれます。従って、回路図ライブラリは、モデルごとにそれらの実体をどこから検索すればよいかを記述したリンクの形で保存されています。
例えば、あるボードを更新する場合、Altium Designer は定期的に更新されたモデルをデザイン内全てのフットプリントのリンク指示に従って検索する必要があります。モデルと対応させるためのファイルの検索順序は、現在のプロジェクトのライブラリから始まり、次に導入された PCB ライブラリ、次にプロジェクト検索パスで指定されたファイルの順序で検索されます。このライブラリ管理方法では、Altium Designer がモデルを確実に探し出せる保証が無いことを意味しています。このような回路図ライブラリのリンクは脆弱で、フォルダ名のリネームや主要サーバへラベルを再割り当てするような毎日の管理業務によって切れてしまう可能性があります。

統合ライブラリの利点

Altium Designer は、統合ライブラリという解決策を提案しました。統合ライブラリには、回路図ライブラリ(または、ライブラリ)だけではなく、関連するモデルライブラリも含まれています。コンポーネントが統合ライブラリから配置された場合、Altium Designer から配置元の統合ライブラリが見つけられるならば、正しいモデルが導入できることが保証されます。
コンポーネントとモデルは、単独の .IntLib ファイル内に全て含まれているため、これらのライブラリは別のワークステーションで仕事を分割したり、デザインを共有したりしたい場合などに設計者に携帯性を提供します。つまり、Altium Designer を実行している各 PC の Libraries パネル内の単独ファイルは、コンポーネントからモデルへのリンクを確実に保持しています(統合ライブラリからコンポーネントが配置された場合)。
ライブラリがコンパイルされると、これらのライブラリの相関関係が完全かどうか確認されます。それはライブラリの有効性だけでなく、確実なピンマッピングまでも確認されることを意味しています。個別のライブラリファイルを利用し続けたい設計者であっても、統合ライブラリパッケージを使用した回路図からコンパイルすることが、ソースコンポーネントを正しくターゲットモデルにマップすることを確実にする方法です。一度これらを実行しておけば、作成した統合ライブラリを無視して回路図ライブラリからの直接配置を続行できます。 

統合ライブラリの作成

統合ライブラリには専用のドキュメントエディタはありません。それらは、統合ライブラリパッケージをコンパイルすることで生成でき、これは PCB プロジェクトや FPGA プロジェクトと類似しています。他のプロジェクトでドキュメントを追加した様に、統合ライブラリパッケージにライブラリファイルを追加してください。
統合ライブラリパッケージに必ず追加しておかなければならないドキュメントは、回路図ライブラリです。PCB、シミュレーションやその他のモデルを含むファイルは、プロジェクト内、導入済みライブラリにリストされた PCB ファイルの中、あるいはパッケージごとに指定した検索パス下の検索位置に存在しているはずです。モデルの検索は、Available Libraries ダイアログに表示されたリストを左から右へ、そして上から下への順序で行われます。
ライブラリをプロジェクトに持たせておくか、あるいは検索パスによって指定した場所に置いておくかは、個々の作業形態によります。統合ライブラリパッケージを準備する時に、モデルの確認や編集を行っていれば、モデルライブラリをすぐに利用でき、パッケージ自体にそれらを追加することができます。ハードディスクやネットワーク上のフォルダにモデルライブラリを頻繁に追加している場合、検索パスを利用してコンパイラに新しく追加されたライブラリを自動的に認識させる方法の方が適しているでしょう。
他のプロジェクト同様に、統合ライブラリパッケージ用のコンパイラは、警告とエラーメッセージのリストを生成します。パッケージ内あるいは検索パスで指定した名称に一致したモデルが存在しないといった意味での、モデルが発見できない旨の警告を受けるかもしれません。更に、実際のフットプリントのパッド名が A や K の時、誤ってパッド名を 1 や 2 とマップした場合にも警告を受けることがあります。
パッケージのコンパイルが完了すると、統合ライブラリファイルが作成されます。この時点で処理しているのは実際の統合ライブラリファイル(.IntLib)ではなく、統合ライブラリパッケージ(.LibPkg)であることに注意してください。パッケージのコンパイルが完了するまで、統合ライブラリはまだ存在していません。

Libraries パネル

Altium Designer で .IntLib ファイルを開くと、次の 2 つのうちのどちらかが可能になります。1 つは、統合ライブラリパッケージ中の統合ライブラリのソースドキュメントを抽出するか、もう 1 つは、Libraries パネルに統合ライブラリを追加することです。このパネルは、統合ライブラリファイルを直接、表示できる唯一の手段です。
回路図ライブラリのコンポーネントと PCB ライブラリのフットプリントを参照できることに注意してください。どちら側からでも統合ライブラリを参照することができます。 また、コンポーネントを参照し、コンポーネントからモデルへの関連を見ることができます。 

コンポーネントに付随したモデルは全て、Libraries パネルのリストに表示されます。確認できたモデルだけがこのリストに含まれており、コンポーネントに添付したモデルが、全てあること、有効であることを確認するには Messages パネルを参照してください。
Libraries パネルでは編集するボタンが無いことに注目してください。繰り返しますが、これは統合ライブラリを参照するためだけのウィンドウであり、ライブラリ内部にアクセスして変更するための箇所ではありません。統合ライブラリは、一度生成されると、内部を直接編集することはできません。 このことから統合ライブラリは、強固なものであると言えます。実際、統合ライブラリの更新は全体の差し替えを意味し、オリジナルのライブラリパッケージをすべて引き上げ、ソースドキュメントを更新してから再度コンパイルすることが必要となります。もし、パッケージ名や出力パスを変更していなければ、新しい統合ライブラリで古いものを上書きします。
これらは全て仕様の一部です。統合ライブラリは意図的に制御された環境となっているので、どんな変更もソースドキュメントへ戻って行うことが必要となります。個別にシンボルとモデルを修正することができる今までのやり方は、回路図を作成してシミュレーション波形を生成するまで、あるいはボードへ更新を行うまで、それらが一致していないという警告を与えることができないので、完成に至るまで場合によっては、繰り返し作業をする必要がありました。

統合ライブラリからの配置

Libraries パネルには Place ボタンが用意されています。このパネルで、統合ライブラリが各種回路図、PCB ごとに分類され、回路図や PCB エディタ内で利用することができます。
統合ライブラリから配置されたコンポーネントには、全てどの統合ライブラリから配置したか後でわかるように、統合ライブラリの配置を手助けする情報が付加されています。従って、回路図ライブラリと統合ライブラリで同じコンポーネントを含んでいる場合(同じモデルリンクを備えた)、それらのモデル情報を検索した際には、各々のライブラリから配置されたコンポーネントは異なった動作をします。統合ライブラリから配置されたコンポーネントでは、モデルを獲得するためにオリジナルの統合ライブラリを検索します。 一方、回路図ライブラリから配置されたコンポーネントは、統合ライブラリに保存されたモデルへのアクセスはしません。

統合ライブラリを利用可能にするには

新たに統合ライブラリを作成した場合は、自動的に Libraries パネルに追加されます。また、Libraries パネルは、統合されたコンポーネントを配置することができるただ一つのプラットホームで、必要な統合ライブラリモデルファイルを検索できる唯一の場所です。もし、コンポーネント配置後にソースとなった統合ライブラリが既に削除されているならば、Messages パネルにモデルが発見できないと言うエラーメッセージが表示されます。
モデルレベルで維持された構成を、ソースの統合ライブラリでしか見ることができないこの制限は、モデルごとの基準で変更することができます。 
結論として、統合ライブラリは各コンポーネントとモデル間のリンクを保護する意味があります。それらのコンポーネントは、モデル検索用に特別なステータスが割り当てられており、一般的な検索を行うよりもむしろ、関連したモデルの統合ライブラリを検索します。 
更に、統合ライブラリは携帯性と保護性を提供しています。それらは、リンクをただ維持しているだけではなく、モデルライブラリ自体が含まれています。統合ライブラリでは、検索パスを変更することなく、あるデザインステーションから他の場所のステーションに移動することができます。そして最終的には、万一オリジナルパッケージに損害が発生し含まれているリンクが壊れた場合でも、Altium Designer では統合ライブラリからソースドキュメントを再生成することが可能です。

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