プロジェクトの要点

Altium Designer で作成される各デザインの基礎はプロジェクトです。このアプリケーションノートでは、異なる種類のプロジェクト、プロジェクトでの作業方法、効果的にProjects パネルを使用する方法の概要を説明します。

Application Note AP0129 (v1.4) May 20, 2008

Altium DesignerのProject (プロジェクト)とは?

Altium Designer で各デザインを開始するポイントはプロジェクトです。Altium Designer のプロジェクトは、一つの出力を完成するためのデザインドキュメントのセットです。例えば、PCBプロジェクトの回路図とPCBは、1つの基板を製造するために必要なファイルを出力します。また、FPGA プロジェクトの回路図とHDLは、1つのFPGAをプログラムするために必要なファイルを出力します。

プロジェクトのタイプ

Altium Designer では、多くの異なる種類のプロジェクトをサポートします。以下に簡単な内容を記載します。

PCBプロジェクト (*.PrjPcb)

基板を製造するために必要なデザインドキュメント
電子回路は回路図として作成します。ライブラリからコンポーネントシンボルを配置し、接続します。デザインはPCBエディタへ移行され、各コンポーネントがフットプリント(パターン)として、回路図上の結線はパッドからパッドへの接続ラインとして具体化されます。PCBの最終的な形状は、ボードに含まれる物理的なレイヤと共に定義されます。デザインルールでは、配線幅、クリアランスのようなレイアウトの要求を指定します。コンポーネントは基板外形内に配置し、接続ラインは、手動または自動機能によって、配線として置き換えられます。デザインが完成すると、ベアボードの製造用、実装機の構成用などの標準フォーマットの出力ファイルが生成されます。

FPGAプロジェクト (*.PrjFpg)

FPGAをプログラムするために処理できるデザインドキュメント
デザインは、回路図 や HDLコード(VHDLやVerilog)を使用して作成します。コンストレイン ファイルは、ターゲットデバイス、内部のデバイスへのピンマッピング、周波数、クロックピンの割り当てのようなデザイン要求を指定するためにプロジェクトに追加されます。デザインの論理合成は、標準のファイルフォーマットであるEDIFで、ソースデータをローレベルのゲート形式に変換します。その後、デバイス ベンダのツールでEDIF データを処理し、指定したターゲットデバイスに合う方法でデザインの配置、配線を試みます。成功すればデバイス プログラム ファイルを作成します。デザインは開発ボードに適したターゲットデバイスにインプリメントされ、テストできます。

Embedded プロジェクト (*.PrjEmb)

エレクトロニクス製品に搭載されているプロセッサで実行される組み込みソフトウェアアプリケーションを作成するために必要なデザインドキュメント
デザインのソースは、C やアセンブリ言語で作成されます。コーディングが完了すると、すべてのソースファイルはアセンブリ言語にコンパイルされます。その後、アセンブラはそれらを機械語(オブジェクトコード)に変換します。オブジェクトファイルは一緒にリンクされ、指定したメモリ領域にマップされます。そして、ターゲットに対応した出力ファイルを作成します。

Core プロジェクト (*.PrjCor)

FPGAでインプリメントされるファンクション コンポーネントのEDIF (モデル)を作成するために必要なデザインドキュメント
デザインは、回路図 や HDLコード(VHDLやVerilog)を使用して作成します。コンストレイン ファイルは、サポートされるターゲットデバイスを指定するためにプロジェクトに追加されます。デザインの論理合成は、標準のファイルフォーマットであるEDIFで、ソースデータをローレベルのゲート形式に変換します。コンポーネントシンボルは、回路図シート上でコンポーネントを表し、EDIFを参照します。

統合ライブラリ (.LibPkg) & (.IntLib)

統合ライブラリを作成するために必要なデザインドキュメント
回路図シンボルは、ライブラリエディタで作画され、定義したモデルを参照します。参照するモデルには、PCBフットプリント、回路シミュレーションモデル、シグナルインテグリティモデル、3Dメカニカルモデルを含めることができます。モデルを含むファイルは、統合ライブラリパッケージ(*.LibPkg)に追加されるか、またはそれらの場所を特定するために検索パスが定義されます。ソースの回路図シンボルライブラリと必要なモデルはコンパイルされ、統合ライブラリと呼ばれる1つのファイルになります。

Script プロジェクト (*.PrjScr)

いくつかのAltium Designer スクリプトを格納するデザインドキュメントの集まり
スクリプトがAltium Designerで実行される時に必ず逐次実行されるインストラクションです。スクリプトは、同じ環境で記述され、デバッグされます。スクリプトは スクリプト単位とスクリプトフォーム の2種類あります。スクリプト単位は、デザインドキュメント上のオブジェクトを修正するためにDXP Application Programming Interface (API)を使用できます。スクリプトフォームはコントロールをホストすると共に、DXP API を使用して、Altium Designerで開いたデザインドキュメント上で動作するスクリプト ダイアログを提供します。

プロジェクトファイルの役割

プロジェクトを構成するデザインドキュメントは、プロジェクトファイルによって管理されます。


図1 Projectsパネルで開いている3つの関連したプロジェクト

プロジェクトファイルは、プロジェクト内の各ドキュメントへのリンクや、プロジェクトに関するオプションを含む、プロジェクトに関するすべての設定が保存されています。プロジェクト内の各ドキュメントは、個別のファイルとして保存されます。これらは、プロジェクトファイルと同じ論理ドライブに存在する場合は、相対的に参照され、異なる論理ドライブ上に存在する場合は、絶対的に参照され、プロジェクトにリンクされます。また、プロジェクトから生成された出力もプロジェクトファイルで参照されます。
保存されるプロジェクトオプションはプロジェクトタイプに依存します。以下のようなOptions for Project ダイアログで設定するオプションを含みます:

  • コンパイラ エラーチェック設定
  • デザイン同期設定
  • デザインコンパイル設定
  • 出力ファイルの保存先
  • マルチチャネルのアノテーション設定

プロジェクトファイルに保存されるその他のプロジェクト設定は、以下のとおりです。

  • 回路図のアノテーション設定
  • レポート、印刷、ガーバーなどの出力設定。これらは、OutJob ドキュメントで定義した出力設定ではなく、回路図、またはPCBエディタのメニューからアクセスする出力設定であることに注意してください。

プロジェクトパネル

Altium Designerで最も頻繁に使用するパネルは、Projectsパネルかもしれません。Projects パネルはプロジェクトの構成が表示されます。プロジェクトを開くと、図1の様にそのドキュメントが表示されます。
編集のために複数のドキュメントを開けるだけでなく、同時に複数のプロジェクトも開けます。これは、図1の様に関連したプロジェクトだけでなく、関連しないプロジェクトも可能です。この図では3つの関連したプロジェクトがあります。これらは、FPGAを含むPCBプロジェクト、ソフトコア プロセッサを含むFPGAプロジェクト、FPGA内のソフトコア プロセッサで動作するソフトウェアのためのエンベデッド プロジェクトです。

Project Insight

Project Insight(プロジェクトインサイト)は、全ドキュメントをプレビューでき、プロジェクト内の特定ドキュメントへ簡単にたどり着けるDesign Insightの機能の一部です。Projectパネルの上にProjectアイコンを動かすと、プロジェクト内のドキュメントの概要を知ることができます。そのドキュメントをプレビューしたいときは、そのままクリックしてください。
Project Insightは、回路図とPCBの両方のドキュメントを表示します。

図2 Projectsパネルの上にProjectアイコンを動かすと、プロジェクト内のドキュメントの概要を知ることができます。

プロジェクト内に多くののファイルがある場合は、左、右の矢印がプレビューに現れます。右矢印をクリックすると、プロジェクトファイル内の前方検索、左矢印で後方検索になります。

ドキュメントはプロジェクトに追加された順番で、Project Insightに表示されます。
ファイルを追加順で見るには、PreferenceダイアログにあるProjects PanelページのShow document position in projectをご覧ください。Projects Panelでは、ドキュメントの隣に数字が現れます。

Design Insightの機能であるConnectivity Insightについて、さらに詳細を知りたい場合は、AR0123 複数シート間の接続 AR0123%20Connectivity%20and%20Multi-Sheet%20Design.PDFをご覧ください
Design Insightの機能であるDocument Insightについて、さらに詳細を知りたい場合は、GU0112 ようこそAltium Designer の開発環境へ GU0112%20Welcome%20to%20the%20Altium%20Designer%20Environment.PDFをご覧ください

プロジェクトへの変更

アクティブドキュメントと呼ばれる、現在編集しているドキュメントは、パネルにハイライトされます。図1で、アクティブドキュメントと共にハイライトされているプロジェクトがアクティブ プロジェクトです。Projects メニューのコマンドを使用して行う変更は、このアクティブプロジェクトに反映されます。
編集するために複数のプロジェクトを開いた時、使用したいプロジェクトに関連したコマンドを簡単に実行する方法は、Projects パネル内のプロジェクト名の上で右クリックすることです。これを実行するとコンテキストメニューが表示され、アクティブドキュメントがそのプロジェクトに属しているかどうかに関わらず、プロジェクトに関する動作を実行できます。
図4は、エンベデッドプロジェクトのドキュメントがアクティブであることを示しますが、プロジェクトに関するコンテキストメニューを表示するため、PCBプロジェクト上で右クリックされています。


図3 プロジェクトに関連したコマンドを使用するためにプロジェクト名を右クリック

プロジェクトパネルの表示オプション


図4. Projects パネルの表示オプション

Projects パネルのための多くの表示オプションがあります。デフォルトの表示モードは、Source Documents、Libraries、Settingsなどの様な、別々の表示フォルダに分類されたプロジェクトドキュメントとして表示します。プロジェクトドキュメントの分類、グリッド表示、マウスクリック動作、プロジェクトを開いた際にプロジェクトフォルダがどのように構成されているかなどの様な、多くのその他の表示モードがあります。
これらのオプションは、Preferences ダイアログ(DXP メニュー)のSystem の項目のProjects Panel ページで設定できます。これらのProject パネル設定に簡単にアクセスするには、図5のようなパネル上部にある ボタンをクリックします。

Projects パネルに表示されたフォルダは、ハードドライブのフォルダではないことに注意してください。これは管理上、プロジェクトドキュメントを見やすく表示するためのものです。

プロジェクト内のドキュメントの順番

ソースドキュメントのようなグループ内のドキュメントは、デフォルトではプロジェクトに追加された順番(プロジェクトファイルにリスト表示される順番)で表示されます。表示フォルダ内でドキュメントの順番を変更するには、ドキュメントをクリックし、移動したい箇所にドラッグアンドドロップします。一度、プロジェクトをコンパイルすると、ソースドキュメントは階層で表示されます。

パネルでドキュメントをドラッグしてもプロジェクト階層を構築できないことに注意してください。プロジェクト内のドキュメント間の親-子階層の関係は、サブシートを表すシートシンボルで定義されます。

プロジェクト階層の詳細については、アーティクルAR0123 複数シート間の接続を参照してください。

プロジェクトパネルの表示

もし、Projects パネルが現在表示されていない場合、ワークスペースの右下のSystem ボタンをクリックし、表示されたメニューからProjects を選択してそのパネルを開けます。


図5 パネル

プロジェクトの作成


図6 File メニューを利用して新規プロジェクトを作成

図 6の様に新規プロジェクトを作成するには、File » New » Project サブメニューのオプションを使用します。

初めて作成した時は、プロジェクトファイルはメモリ内に存在するだけであることに注意してください。Save 、または Save As コマンドを使用して保存したい場所、名称を指定してファイルを保存します。

FPGA、Core、Embedded プロジェクトファイル名に、スペースを使用しないでください。

プロジェクトからドキュメントを追加、削除する

一度、プロジェクトを作成して必要な場所に保存すると、デザインドキュメントを追加できます。新規、または既存ドキュメントをプロジェクトに追加する一番簡単な方法は、Projects パネルでプロジェクト名を右クリックしAdd New to Project または Add Existing to Project メニューオプションを使用することです。

更に、Word® ファイル、または Adobe® PDF のようなその他のプロジェクト関連のドキュメントをプロジェクトに追加できます。この場合、通常の方法で追加します。ファイルを表示するには、Choose Document to Add ダイアログでFile Type リストをAll Files (.)に設定する必要があります。

プロジェクト オプションの設定

プロジェクトに関する設定は、Options for Project ダイアログで行います。このダイアログにアクセスするには、メインメニューバーのProjects メニューからか、またはProjects パネルにあるプロジェクト名を右クリックします。


{_}図7 _

Altium Designer ドキュメントライブラリの以下のチュートリアルでは、プロジェクト オプションの設定についての詳細が記載されています。更に、F1Options for Project ダイアログのWhat's This ヘルプを使用して詳細について確認できます。

PCBのプロジェクト オプションについてはチュートリアルTU0117 PCB設計入門を参照してください。
FPGAのプロジェクト オプションについてはチュートリアルTU0116 FPGAデザイン入門を参照してください。
Core のプロジェクト オプションについてはチュートリアルTU0123 コアコンポーネントの作成 TU0123%20Creating%20a%20core%20component.PDFを参照してください。
エンベデッドプロジェクトについては、各ターゲットプロセッサ用の組込みツールの使用ガイドで、エンベッドプロジェクトオプションの設定について参照してください。

TSK3000については、GU0111 組込みツールの使用 - TSK3000 用を参照してください。
TSK51x/TSK52xについては、GU0107 組込みツールの使用 - TSK51x TSK52x 用を参照してください。
TSK165x については、GU0108 組込みツールの使用 - TSK165x 用を参照してください。
TSK80x については、GU0109 組込みツールの使用 - TSK80x 用を参照してください。<0}

プロジェクトドキュメントの管理

Projects パネルのドキュメントの表示は、ドキュメントがハードドライブにどのように保存されているかとは無関係です。それについて考える一つの方法は、Projects パネルではプロジェクトを論理的に表現すると言うことです。保存されたドキュメントの構成は自由ですが、プロジェクトドキュメントを社内の共有サーバーに保存し、自分のアイディアや作業用のファイルをPCに保存することが考えられます。また、Altium Designer をバージョン コントロール システムと共に使用し、中央のリポジトリからサーバーの自身のワークスペースにプロジェクトドキュメントをチェックアウトすることもできます。

ドキュメントをプロジェクト間で共有

各プロジェクトドキュメントはプロジェクトにリンクされているため、ドキュメントを複数のプロジェクト間で共有できます。さまざまな製品で使用する標準的な電源の回路図シートや、デザインの一部を個別にシミュレーションする場合などが考えられます。

プロジェクトドキュメントを新しい名称で保存

新しい名称でドキュメントを保存できるSave As コマンドがあります。これは名称を変更するプロセスでは無く、このコマンド実行後、ハードドライブには旧ドキュメントと新規ドキュメントの両方が存在することに注意してください。ドキュメントでSave As を実行するとプロジェクトも更新され、名称が変更されたドキュメントがプロジェクトの一部になります。プロジェクトに影響を与えないでドキュメントをコピーしてバックアップファイルを作成したい場合、Save Copy As コマンドを使用します。

2つのプロジェクトに属するドキュメントを新しい名称で保存し、双方のプロジェクトを開いている場合、双方のプロジェクトに名称の変更が反映され、プロジェクトの整合性が維持されます。

プロジェクトドキュメントでSave As を実行し、新しい場所へ保存しても、プロジェクトの場所を移動することはできません。プロジェクトドキュメントがその場所に保存されるだけです。また、プロジェクト内のすべてのドキュメントのリンクが更新され、新しいプロジェクトドキュメントから、実際のプロジェクトドキュメントが保存されている古い場所にリンクされます。再度繰り返しますが、Projects パネルはファイルを管理するためではありません。全ドキュメントを移動したい場合は、オペレーティングシステムを介して、プロジェクトやリンクされているドキュメントを移動する必要があります。

ストレージマネージャを使用したプロジェクトドキュメントの管理


図8 ストレージマネージャを使用して、プロジェクトドキュメントの名称を変更し削除

Projects パネルが表示しているプロジェクトの論理構造の場所は、Storage Managerがファイル管理タイプのインタフェースで提供します。アクティブプロジェクト内のドキュメントがリストで表示され、選択されたドキュメントへのパスがドキュメントリストの下方に表示されます。ドキュメント名を右クリックすると、名前の変更や削除など、ファイル管理が行えます。

Storage Manager の詳細については、カーソルがパネル上にある時にF1 を押します。
バージョンコントロール・システムへのインターフェースの詳細については、チュートリアルTU0114 バージョンコントロール・システムを参照してください。

関連するプロジェクトのグループ化 - デザインワークスペース

複数のPCBが含まれる製品や、改版した基板デザインをグループ化したい場合には、関連する複数のプロジェクトが存在することになります。このような場合、デザインワークスペースを作成することで、関連するプロジェクトをグループ化することできます。

ワークスペースはプロジェクトの集まりと考えてください。実際、デフォルトか、自身で作成し、オープンしたものかも知れませんが、Projects パネルには現在のワークスペースが表示されています。

オープンされているプロジェクトのセットをワークスペースとして保存するには、Projects パネルの上部のWorkspace ボタンをクリックするか、またはFile メニューのコマンドを使用します。
異なるワークスペースを開くと、最初に現在のワークスペースを閉じる必要があります。保存されていないドキュメント、プロジェクト、現在のワークスペースに対する変更を保存するように促されます。


図9 関連したプロジェクトのセットをデザインワークスペースとして保存

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