CAMエディタによるデータ検証

このチュートリアルは以下のステップにしたがって説明しています。まず、インポートされたガーバーデータ、NCドリルファイル、ODB++ファイルから、正しいネットリストを抽出します。次に、Altium DesignerのCAMエディタにあるデータ上でデザインルールチェック(DRC)を走らせて、データの検証または修正を行います。

Tutorial TU0101 (v1.4) March 26, 2008

Altium DesignerのCAMエディタは、ガーバーファイル、NCドリルファイルをインポートし、デザインルールを走らせてインポートしたデータの検証を行うことができます。一度デザインルールで検証されると、これらのルールのAuto Fix オプションを使用することができます。 このチュートリアルで使うガーバーファイルのサンプルには、PCBデザイン 4 Port Serial Interface から作成されたデータです。 チュートリアルに必要な全ファイルはAltium DesignerがインストールされているフォルダのExamples にあります。

データのインポート

もし、ボード上に穴(例えば、スルーホールまたは、ブラインド、ベリードビア)がある場合は、少なくとも信号層(例えば、トップやボトムのガーバーファイル)と一つかそれ以上のNCドリルファイル(Excellon 2フォーマット)を用意してください。 最初にブランクのCAMファイルを作成し、それから必要なファイルをインポートします。
インポートオプションの設定についての詳細は、TU0102 CAMエディタでのインポートとエクスポート TU0102%20CAM%20Editor%20Imports%20and%20Exports.pdfを参照してください。

新規CAMドキュメントの作成

1.新規CAMドキュメントを作成するには、メニューからFile » New » CAM Document を選択します。 新しい、白紙状態の新規CAMドキュメント、CAM1.Camがデザインウィンドウに表示されます。
2.ドキュメントを保存します。 File » Save [ショートカット CTRL + S]を選択してください。 名前を入力します。たとえば、4 Port Serial.Camなど。新しいCAMファイルの場所を確認したら、OKをクリックしてください。

Quick Load を使用してファイルをインポート


新規のCAMドキュメントにガーバー、NC Drill、ネットリストファイルをインポートします。ここでは、Quick Load オプションを使用して、選択したフォルダ内のすべてのファイルを一括でインポートします。
1. File » Import » Quick Load を選択します。File Import - Quick Load ダイアログが表示されます。
2. をクリックして、Browse For Folder ダイアログを開き、Altium Designerのインストールフォルダ内にあるCAM Data Verification\Out フォルダを表示させます。 OKをクリックします。
3.選択したディレクトリにあるインポート用のファイルリストが表示されます。 OK をクリックしてファイルをインポートし、File Import - Quick Load ダイアログを閉じます。. Import Drill Dataダイアログが表示されます。

4. Import Drill Data ダイアログでOK をクリックすると、デフォルト設定のままになります。 ファイルがCAMエディタにインポートされ、デザインウィンドウに表示されます。 また、Quick Load Process Reportが作成されます。
5.ワークスペース下部のCAM ボタンをクリックしてCAM パネルを開きます。ここで、レイヤ名やその他の情報を確認できます。 どのパネルの上でも、F1 キーを押すとヘルプにアクセスできます。

6.デザインを保存 [ショートカットCTRL + S] します。

レイヤ指定の確認

CAMドキュメントでは、すべてのガーバー、NC Drill 、ネットリストのレイヤを適切なレイヤに割り当てる必要があります。
CAMエディタでは、自動でガーバーファイルの拡張子を見てLayer Types Detection Templateのリスト通りにレイヤを一致させますが、常にLayers Tableを確認してください。 このチュートリアルでは、レイヤタイプディテクションを割り当てる必要はありません。
Layer Types Detection Templateを表示、変更するには:
1. Tables » Layer Type Detection を選択し、Layer Types Detection Template ダイアログを表示させます。

ネットリストの抽出(データを検証する為のDRCを実行する前に必要)の為に重要なレイヤは、信号層とプレーン層です。 信号層としてTop、BottomまたはInternalのレイヤタイプが割り当てられることになるでしょう。 シルクスクリーンレイヤはDRCで必要になります。
2.もし、他のLayer Type Stringを追加する必要がある場合、Layer Typeのレイヤに関連する拡張子(上図の様に、前のエントリからコンマによって区切られます)を追加します。 もし、このダイアログでテンプレートを変更した場合、この内容を反映するには、ファイルを再度インポートする必要があることに注意してください。
3. OK をクリックすると変更した内容がAltium Designerに保存されます。
Layers Table を見ると、全てのレイヤがレイヤタイプに割り当てられているはずです。 Layers Table を表示、変更するには:
1. Tables » Layers を選択し、Layers Tableダイアログを表示させます。
2.自動で認識されたレイヤ名のリストを確認します。 Layer Types Detection template ダイアログで定義された通りに、レイヤ名がレイヤタイプに割り当てられているはずです。 メカニカルレイヤは Temporary に設定してください。
3. OK をクリックし、ダイアログを閉じます。 次にレイヤオーダーを確認します。

Layers Orderの確認

すべてのレイヤの割り当てを行った後は、Layers Order Table でPCBレイヤのスタックが正しいことを確認します。

1. Tables » Layers Order を選択し、Create/Update Layers Order ダイアログを表示させます。 このダイアログでは、CAMエディタにインポートされたレイヤ(Layer Logical Order)と製造のための物理的なビルドアップ(Layer Physical Order)とのマッピングを行います。
2.自動マッピングで割り当てられたレイヤ名のリストを確認します。 必要ならば、この欄で利用できるレイヤのドロップダウンリストをクリックし、新しい値を選択して、Layer Physical Orderを変更します。 複数のレイヤに同じLayer Physical Orderを割り当てられないことに注意してください。 OKをクリックします。
3.もし、このダイアログを閉じて再度開くと、Layer Physical Orderで変更した内容でスタックアップが再配列されることが確認できます。

Layers Setsの確認


次に、レイヤセットを確認します。 これはボードにブラインド/ベリードビアが含まれている場合に必要で、各ドリルセットを個々に指定し、一致するNC Drill ファイルに関連させ、そのドリルセットが貫通する全てのレイヤを選択します。 サンプルデザインでは、ブラインドまたはベリードビアが含まれていませんので、この項を省略します。 もし、異なるデザインでレイヤセットを設定する必要があるならば、これらの項を続けて行ってください。
1. Tables » Layers Sets を選択し、Create/Update Layers Sets ダイアログを開きます。
この表には、割り当てられたドリルレイヤにブラインドまたはベリードビアを関連させる為のレイヤペアが含まれています。 このダイアログからレイヤセットを追加、または削除し、レイヤペアを選択することができます。
2.レイヤセットを作成するため、Layers Set Name欄に名前(例えば、Blind Top)を入力します。 または、Insert Layers Setをクリックして、新しいレイヤセットを追加します。 デザインのブラインド、ベリードビアに必要なLayer Sets を作成する為にデータを入力します。
3. Assigned Drill Layer欄でクリックし、ドロップダウンリストから割り当てられたドリルレイヤを選択します。
4. Signal/Plane Layers in Set欄をクリックして表示されるSelect Layer Pairsダイアログから、レイヤセットに含まれる信号/プレーンレイヤを選択します。 複数のレイヤを選択する場合は、Ctrl またはShiftキーを使用し、OKをクリックします。 OKをクリックして、Create/Update Layers Sets ダイアログを閉じます。

ネットリストの抽出と名称変更


レイヤ設定を確認しましたのでネットリストを作成することができます。 ネットリストは、デザインを検証するためのDesign Rule Check を実行する前に抽出する必要があります。
1. Tools » Netlist » Extractを選択するとネットリストが抽出されます。 レイヤスタックとレイヤセットに従って、あるレイヤから他のレイヤに接続された銅箔に沿ってネットがトレースされ、ネットリストは抽出されます。
2. CAMパネルのNets タブをクリックすると、ネット名が表示されます。 この段階で一般的なネット名(例えば、$Net1)が割り当てられています。

ネット名の変更


Quick Load インポートの過程で、オリジナルのネット名を保存するIPC Netlistが含まれていれば、PCB設計でのオリジナルのネット名に名称を変更することができます。
もし、ガーバーデータとNC DrillデータのIPC-356-D ネットリストファイルがQuick Load フォルダに含まれていなかった場合、File » Import » Netlist コマンドを使用してCAMエディタにそれをインポートすることができます。
ネット名を変更するには:
1. Tools » Netlist » Rename Nets を選択します。 ネット名は、CAMエディタ で作成されたネット(例えば、$Net1)からGND や VCC の様にPCBデザインで表示されたオリジナルの名前に変更されます。 ネット名は、CAMパネルのNetsタブで更新されます。
2.ドキュメントを保存します。

デザインルールチェックの実行


製造に影響を及ぼすCAMファイルで違反が無いか検証するため、18種類のルールでDRC(Design Rule Check)を実行することができます。 ルールの値は、.RUL ファイルを含むProtelから出力したCAMデータをロードしない限り、前のCAMエディタセッションから引き継がれます。 いずれにしても、これらのルールの値はDRCを実行する前に変更できます。

DRCの設定

1. Analysis » PCB Design Check/Fix を選択します。 PCB Design Check/Fix ダイアログが開きます。
2.このダイアログから、必要なとき、あるいはAuto Fixを有効にしたときにSizeを適切な値に変更できます。 Auto Fix オプションをオンにすることにより、CAM エディタは発見した違反を自動で修正します。 最初に違反の数を確認するため、Auto Fix をオフにしてDRCを実行してみます。 それから、Auto Fix オプションをオンにして実行します。
上図のPCB Design Check/Fix ダイアログで表示されているようにSizes を入力します。 すべてのCheck欄のチェックボックスにチェックを入れます。 Check ヘッダーをクリックすることで、すべてのオプションのオン、オフを切り替えることができます。
3.一度、DRCを設定しておけば、Saveをクリックすることで.DRC ファイルにDRC設定を保存することができます。 保存した.DRC ファイルを再度、ロードする場合はOpen ボタンを使用します。

4. OK をクリックして、DRCを実行します。 DRCが実行され、違反内容がCAMDXP ダイアログに表示されます。
5. OK をクリックしてダイアログを閉じます。 各違反についての詳細を表示するために、CAM パネルのDrc タブをクリックします。
6.個々のエラーのサブフォルダを表示するために、CAM パネルのDrc タブ内の違反エラーフォルダ(例えば、Silkscreen over Solder mask)をダブルクリックします。 サブフォルダ(例えば、Ref (13))をクリックすると、デザインウィンドウで違反しているオブジェクトをズームしハイライト表示します。

クエリによる違反箇所の詳細情報表示


違反に含まれたオブジェクトをクエリすることにより、エラーの原因について詳細な情報を確認する事ができます。
1. CAM パネルがアクティブになっている場合、Shift + F5 キーを押すかワークスペースをクリックして、デザインウィンドウをアクティブにします。 ズームやパンコマンドを使用できます。
2.Query を実行するためにQ キーを押すと(または、Analysis » Query » Objectを選択します)、カーソルがポインティングハンドに変わります。 詳細な情報を確認したいオブジェクトをクリックします。 選択したオブジェクトの情報は、CAM パネルのInfo タブ内に表示されます。 Info Queryの項目の下部に、クエリしたオブジェクトに関連する全てのDRCエラーがリスト表示されます。 違反した箇所をズームする為にこれらのエラーをクリックします。
3.クリアランスの問題があれば、オブジェクト間の距離を測定したい場合があると思います。 Analysis » Measure のサブメニューからPoint to Point またはObject to Object のような測定オプションを選択し、測定したい箇所またはオブジェクトをクリックします。 測定結果は、CAM パネルのInfo タブ内に表示されます。

Auto Fix の使用


1. PCB Design Check/Fix ダイアログ(Analysis » PCB Design Check/Fix)で、Silkscreen over Solder MaskデザインルールのみCheck を有効にし、このルールのAuto Fix のチェックボックスを有効にします。 OK をクリックして、DRCを実行します。 CAMDXP ダイアログに結果が表示されます。
2. Auto Fix オプションがSilkscreen over Solder Maskのエラーを解決したので、違反の数が減少したことが判るはずです。 Auto Fix は、違反をクリアするために重なったオブジェクトを削除します。
3. Auto Fix オプションを使用して、何が達成されたかチェックします。 CAM パネルのDrc タブ内でSilkscreen over Solder mask違反エラーフォルダをダブルクリックします。 それから、デザインウィンドウで自動修正されたオブジェクトをハイライト表示する為に、Ref (13) のサブフォルダをクリックします。
4.自動修正された状態を戻す場合は、Edit » Undo (ショートカット Ctrl + Z) を使用します。











CAM パネルでのAuto Fix の使用

CAM パネルのDRC タブ内で右クリックして、Auto Fix オプション(適用できる場所で)を使用することもできます。 これは、DRCのタイプ全体で修正するのと同様に個別にエラーを修正することもできます。
silkscreen over solder mask エラーをすべて自動修正するために、たとえば、CAM パネルのDrc タブ内で、Silkscreen over Solder Mask違反フォルダを右クリックし、Fix All - Silkscreen over Solder Mask errorsを選択します。 そのフォルダ内のすべての違反が修正されます。
個々のエラーを自動修正する場合は、個々のエラーのRef フォルダを右クリックし、Fix DRC Error を選択します。 エラーが修正されます。

残りの違反の確認

1.残りの違反を確認し、必要な場合、他のエラーを解決します。 以下の表では、残りの違反の理由を説明しています。

DRC 違反

注記

Annular Ring (Drill>Mask)

アニュラリング(Drill to Mask)の3つの違反は、マイナスの値になっている為、DRCでは許可されません。 Analysis » Query » Object コマンド(ショートカット Q)を使用して詳細情報を確認すると、ドリル穴がパッドより大きく140 milの直径で、マスクの直径が150 milとなっています。 Drill to Maskのエクスパンション値 (ドリル穴とマスク直径間の差の半分) 5milは、製造工場の最小値(Pad to Mask)4milより良いので、これらのエラーは無視することができます。

Solder Bridging

Solder Bridging(はんだブリッジ)は、マスクによって露出されたパッドと異なるネットのTop(あるいはBottom)レイヤのオブジェクトとMask Top(あるいはMask Bottom)レイヤのマスクの開口部分の端からの距離をチェックします。 ネットが異なり、オブジェクトが正しくマスクで覆われていない場合、DRCは違反を報告します。
この例ではんだブリッジは、コネクタへの接続箇所でマスクに接触する場所で発生しています。 マスクの下に多くの異なるネットがあるので、エラーが生成されます。 外観検査でOKであれば、違反は無視することができます。

Net Antennas

無秩序な閃光が感知された場合。 このDRCは、トラックの終端、パッド、ビアに接続していないトラックを検索します。 このようなオブジェクトは、Edit » Clear を選択し、フラッシュしている箇所を選択してから右クリックして削除することができます。 コマンドを終了するにはESC キーを押します。 この変更についてはPCB設計者に報告する必要があります。

2.デザインデータが確認され、次の製造ステップへ移る準備ができました。

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