PCB レイヤスタック管理

プリント回路基板、または PCB は、電気的にコンポーネントを接続したり機構的なものを取り付けるために使用します。オーストリアの科学者である Dr Paul Eisler は、1943 年に最初の printed wiring board を作成したとされています。そこで、プリント回路により、大きな配線を真空管ラジオに変えました。

PCB は、層の積み重ねとして形成されます。プリント回路基板(PCB)が製造された当初は、基板は、片面、または両面で薄い銅箔層に覆われた絶縁コア層でした。配線は、エッチング(不要な銅箔を除去)して、伝導性のある線として銅箔層で形成されました。

簡単な片面基板。bottom 層にある回路パターンが基板から見えていることに着目してください。

今日では、ほとんどの PCB デザインで複数の銅箔層が使用されています。2 層から 10 層までは一般的ですが、30 層以上の基板を製造することは可能です。これらの銅箔層は、レイヤスタックとして(それらを分割する絶縁材料を含む)設計環境で定義します。

単層のプリント回路基板を設計するには、1 つのレイヤスタックを定義するだけです。そこで、縦方向、または Z 平面の全体の基板領域を定義します。しかし、科学技術の革新と加工技術の改善により、PCB の製造において(フレキシブル PCB を設計、製造する機能を含む)革命的な構想につながりました。フレキシブル部分を経由して PCB のリジッド部分と結合して、複雑なハイブリッド PCB を設計できます(珍しい形状の筐体へ合わせるために折りたたむことができます)。

フレキシブル部分を経由して接続した PCB のリジッド部分(創造的なデザインでコンパクトなエレクトロニクス製品に対応する革新的な構想)。

リジッドフレキシブル PCB は 1 つの実体として製造するので、1 つの実体として設計する必要があります。これを行うには、設計者は複数の PCB レイヤスタックを定義し、リジッドフレキシブルデザインの部分として異なるレイヤスタックを割り当てることができる必要があります。

PCB レイヤスタックアップ技術と用語

Main article: PCB Layer Stackup Technology and Terminology

PCB テクノロジーの進歩は、エレクトロニクス製品のコンパクト化のみを探求して向上したわけではありません。それらの製品に使用するよりコンパクトなコンポーネントの探求によっても向上しました。相互に接続された配列を持つ PGA や BGA コンポーネントは、度々、PCB 内部を使用して製造されます。それは、この PCB のために開発された技術(現在、PCB の製造で主流となっている High Density Interconnect (HDI) 技術と呼ばれます)です。

Ball Grid Array パッケージの内部構造の例。

プリント回路の設計や製造に関する資料、テクニックの詳細については、Lee Ritchley による Right First Time - a Practical Handbook on High Speed PCB and System Design を参照してください。無償の PDF バージョンは、http://www.thehighspeeddesignbook.com/ からダウンロードできます。

複数のレイヤスタックがある 1 つのデザイン

リジッド PCB、リジッドフレキシブル PCB は、単純になるように 1 つの実体として製造されます。これを行うために、設計者は以下を行える必要があります:

  • リジッドフレキシブル PCB の全体の形状を定義。
  • リジッドフレキシブル デザインに必要な全ての層が含まれているマスターの層セットを定義。
  • 複数のレイヤスタックを定義。各スタックには、各リジッドやフレキシブル領域に必要な層のみ含まれます。
  • 様々なリジッド、フレキシブル領域(各サブスタックが適用されます)を定義。
  • リジッドフレキシブル PCB を製造するために必要な製造資料ファイルを生成。

この基板は、3 つのレイヤスタック(2 つのリジッドスタックと 1 つのフレキシブルスタック)が定義されています。

レイヤ構成マネージャでレイヤスタックを定義

全てのレイヤスタックは、Layer Stack Manager で定義します。Layer Stack Manager を開くには、メニューから Design » Layer Stack Manager を選択します。新しい基板のデフォルトのスタックは、下図のように top、bottom solder/coverlay、overlay layer、絶縁コア、2 つの銅箔層から成ります。

レイヤスタック管理は、Layer Stack Manager ダイアログで行います。新しい基板のデフォルトのスタックの例。

ダイアログには、2 つのモードがあります。Simple モードでは、従来のリジッド PCB のスタックの層を管理するために必要な機能がダイアログに表示されます。リジッドフレキシブル PCB では、複数のスタックを作成、管理できる必要があります。これは、Advanced モード(ダイアログの左下にある Advanced ボタンをクリック)で行います。

スタックの追加、管理は、Advanced モードで行います。それは、ダイアログ下部に表示されます。

このモードで、ダイアログは 2 つの鍵となる領域に分割して表示されます:

  • Stack region (下部の領域) – レイヤスタックを追加、削除、並べ換えできます。
  • Layer region (上部の領域) – 定義したスタックに利用できる層を管理できます(層の属性を定義、層の追加、削除、有効化/無効化、並べ換え)。

ダイアログの下部の領域で選択されているスタックは、その名称がグレーの背景でハイライト表示されます。そして、このスタックはダイアログ上部にある層の領域に表示されます。

レイヤスタックの追加、削除、設定

スタックの追加、削除や順番は、Layer Stack Manager の下部で設定します。この部分は、 ボタンをクリックした場合のみ表示されることに注意してください。

スタックを追加、削除、設定する場合、以下のことに注意してください:

  1. 1 つのデフォルトの Board layer stack は、新しい基板を作成する時に定義されます。このスタックは、削除できませんが名称を変更できることに注意してください。
  2. Add Stack ボタンをクリックすると、現在、選択されているスタックが複製され、右に追加されます。
  3. 層属性は、その層のメンバーへ適用されます。必要な場合、別個の Solder Mask/Coverlay、Overlay layer を各スタックに追加できることに注意してください。
  4. スタックの順番(左右)は、スタック領域の右下にある Move LeftMove Right ボタンを使用して変更できます。Layer Stack Manager で表示されるスタックの順番は、ボードデザインでどのように使用されるか影響は無いことに注意してください。
  5. 各スタックは、それを固有に確認できる名称にする必要があります。これにより、正しいスタックがユーザ定義のボード領域へ適用されます。
  6. フレキシブルの各スタックは、折り曲げ属性を適用できるように Flex オプションを有効にする必要があります。フレキシブルの折り曲げは、フレキシブル領域に Bending Line を配置して定義し (Design » Board Shape メニュー)、それから、PCB パネルで Layer Stack Regions モードに設定して属性を編集します。

3 つのスタック(2 つのリジッドスタックと 1 つのフレキシブルスタック)が定義された基板。

Layer Stack Manager の layer 領域で特定の層のセルをクリックすると、その層(左の図を含む)はハイライトされます。

スタックから層を追加、削除

層は、Add Layer ボタン(追加用)、または右クリックメニュー(全てのタイプの変更用)を使用して、Layer Stack Manager の上部で追加、削除、並べ換えます。

層を追加、削除、移動する場合、以下のことに注意してください:

  1. 新しい層を追加するには、Add Layer ボタンをクリックし層のタイプ (信号層、インターナルプレーン、絶縁体、または overlay) を選択します。
  2. 新しい層は、Layer Stack Manager の上部にリスト表示された層へ追加されます。新しく追加した層は、デフォルトで、全ての既存のスタックに反映されます。スタックでそれが必要無い場合、各スタックを選択し、Layer Name の左にあるチェックボックスを使用して層を無効にします。
  3. Solder Mask/Coverlay や Overlay レイヤを追加した場合、全てのスタックへ自動で層は追加されないことに注意してください。これらのレイヤタイプは、各スタックへ追加/削除できます。
  4. 最初に銅箔層(信号、またはプレーン)を追加した時、スタックの釣り合い(銅箔-絶縁体-銅箔-絶縁体等)を維持するために絶縁層も自動で追加されます。追加する絶縁体の場所とタイプは、ダイアログの右上にある technology スタイル設定でコントロールします。これは、スタイルオプションを Custom に設定した場合、問題にはなりません。この場合は、選択したレイヤタイプが追加されるだけです(スタイル設定の詳細は以下参照)。
  5. スタック内の層を上、または下に移動するには、層を右クリックし Move Layer UpMove Layer Down コマンド、または Move UpMove Down ボタンを使用します。銅箔、または絶縁層を移動する時、スタイルオプションを Custom に設定(選択した層のみ移動します)しない限り、近隣の絶縁/銅箔層も移動することに注意してください。
  6. 層属性は、その層のメンバーへ適用されます。これは、スタックへ追加した Solder Mask/Coverlay や Overlay layer へ適用しません。
  7. 1 つ、または複数の層を選択、削除できます。削除した層は、利用できる層セットから削除されるため、それを使用している全てのスタックから削除されます。
  8. レイヤスタックを Undo、Redo するには、Undo  や Redo  ボタンを使用します。

Layer Stack Manager ダイアログの右上に、レイヤ technology の Style を選択するオプションがあります。利用できるオプションには、Layer PairsInternal Layer PairsBuild-upCustom があります。このオプションは、レイヤスタックアップの最終的なデザインに影響を及ぼさないことに注意してください。これは、Add Layer コマンドを実行した時、追加する絶縁層のタイプや、追加するスタックの場所を指定するために使用するだけです。Custom 以外のモードでは、信号層を追加すると絶縁層も追加されます。追加される絶縁体のタイプや場所は、使用されている現在の層数や、スタイル設定に依存します。2 番目のレイヤスタックを追加すると、スタイルは自動で Custom に設定されることに注意してください。Custom モードでは、新しいレイヤは 1 つずつ追加されます。

層属性の設定

各層の属性は、PCB 製造業者と相談して定義する必要があります。この情報は、Layer Stack Table に含まれます。各層の属性は、ダイアログの layers 領域で直接、編集します。セルを編集するには、セルをダブルクリックします(編集できるセルの場合)。

複数のセルを編集するには、以下を行います:

  • Windows の標準の Shift+Click (領域指定)、または Ctrl+Click (個々にセルを指定) を使用し、複数のセルを選択します。
  • F2 を押して編集モードにします(マウスを使用しない、または選択を解除)。
  • キーボードを使用して必要な文字を入力するか、またはマウスを使用してドロップダウンから必要なオプションを選択します。
  • チェックボックスのセルで Shift+Click、または Ctrl+Click を使用してから Spacebar を押して、チェックボックスの設定を切り換えます。

レイヤタイプ、属性、機能

Altium Designer では定義済みの 1 つの層セットがあり、どの層もいずれかのレイヤスタックに使用できます。そのデザインが 1 つの PCB、または多くのリジッド、フレキシブル部分が組み合わさったリジッドフレキシブルデザインかどうかに関係無く、この層セットには PCB デザインに使用する全ての層が含まれています。様々な層のタイプをレイヤスタックに含めることができます(銅箔、絶縁体、表面層、マスク層を含む)。各層には、材料、機構的な要件を指定する必要があります(材料、厚み、比誘電率等)。材料の選択、それらの属性は、基板製造業者と相談する必要があります。

層のタイプやそれらの属性の詳細は、下表に記載されています。また、層の定義や、それらを様々なスタックへ割り当てるプロセスについては、その後に説明します。

レイヤタイプ材料厚さ属性コメント
SignalCopper

mm、または mils

Thickness

信号配線を定義するために使用した銅箔層で、電気的な信号や電流を通します。一般的に、アニール箔や電着。
Internal PlaneCoppermm、または milsThickness電源や GND に使用するベタの銅箔層で、領域に分割できます。また、プレーン端から基板端(プルバック)までの距離を指定する必要があります。一般的に、アニール箔。
DielectricFR4、ポリイミド、様々な製造業者特定の材料mm、または mils

Type (function), Material, Thickness や Dielectric Constant (Dk)。

絶縁層は、リジッド、またはフレキシブルに使用できます。コア、プリプレグ、フレキシブル層を定義するために使用。

湿気、温度域、引裂き抵抗、柔軟性に関する寸法安定性のような、重要な機構的属性を含む。

絶縁抵抗、誘電率 (Dk)、誘電正接 (損失係数, Df、または Dj) のような、重要な電気的属性を含む。

Overlayエポキシ、LPI (liquid photoimageable) シルクスクリーン印刷  表示する文字/図形(例えば、コンポーネントデジグネータ)。

Solder Mask/Coverlay

1) Liquid photoimageable solder mask (LPI、または LPSM) , Dry Film photoimageable Solder Mask (DFSM), または

2) フレキシブルフィルムで覆われた接着剤、一般的にはポリイミド、またはポリエステル。

mm、または milsType (function), Material, Thickness や Dielectric Constant (Dk)。

1) 回路へ適用できる半田の場所を制限するための保護層。クラス A (flex-to-install) のアプリケーションを使用するリジッドやフレキシブルに適切な、費用効果があり、証明されたテクノロジー。フレキシブルフィルム カバー層より適切。

2) クラス A と B (dynamic flex) を使用するフレキシブルに適切。丸穴/コーナーが必要です(一般的に、ドリル、またはpunch で穴が開けられます)。

Paste Maskpaste mask stencil が製造される層。Stencil は、一般的にステンレスです。stencil の開口は、コンポーネントを配置する前に solder paste がコンポーネントパッドへ適用される場所を示します。  solder mask screen を製造するために使用するマスクレイヤ。solder paste が適用される場所を示します。

プレーン層へネットを割り当て

Main Article: Internal Power and Split Planes

Altium Designer の以前のバージョンでは、Layer Stack Manager、またはワークスペース内のプレーン層をダブルクリックして、プレーンへネットを割り当てることができました。複数のレイヤスタック機能を導入したことで、ネットは、常にワークスペース内のプレーン層をダブルクリックしてプレーンへ割り当てます(プレーン層は、アクティブレイヤである必要があります)。ダブルクリックすると、Split Plane ダイアログが表示されます。そこで、下図のようにネットを選択します。このプロセスは、全体のプレーンへ 1 つのネットを割り当てる、またはプレーンのスプリット領域へネットを割り当てる場合と同じです。

プレーン層へネットを割り当てるには、プレーン層をアクティブレイヤにしてからダブルクリックし Split Plane ダイアログを開きます。そこで、ネットを割り当てます。

全体のボードシェープを定義

Main Article: Creating and Modifying the Board Shape

最終的なボードの構成(1 つのリジッド領域、または複数のリジッドフレキシブル部分)に関係無く、全体の外部形状はボードシェープとして定義します。ボードシェープは、以下の方法で作成できます:

  • 手動で定義 - 形状を再定義、または既存のボードの頂点(コーナー)を移動して定義します。Board Planning Mode (View » Board Planning Mode) へ切り換えてからDesign メニューのコマンドを使用します。
  • セレクトしたオブジェクトから定義 - 通常、メカニカルレイヤ上の外形から定義します。外形を他の設計ツールからインポートしている場合、このオプションを使用します。2D Layout Mode (View » 2D Layout Mode) へ切り換えてから Design » Board Shape サブメニューのコマンドを使用します。
  • 3D 外形から定義 - 空のボードを、MCAD ツールから Altium Designer 3D Body Object (Place » 3D Body) へ STEP モデルとしてインポートしている場合、このオプションを使用します。3D Layout Mode (View » 3D Layout Mode) へ切り換えてから、Design » Board Shape サブメニューのコマンドを使用して、ボードシェープを選択します。

メインの View メニューには、PCB エディタでの作業モードがいくつかあり、ショートカットが表示されています(Board Planning Mode (1)、2D Layout Mode (2)、3D Layout Mode (3) を素早く切り換えできます)。そのエディタのメニューには、それぞれのモードに関するコマンドが含まれています。そのため、Design メニューでボードシェープ コマンドを探していて、それを見れない場合、正しいモードか確認してください!

ボード領域の定義とサブスタックの割り当て

Main Article: Defining Board Regions and Bending Lines

新しいボードを作成する時、全体のボードシェープには、Default Layer Stack Region と言うボード領域が自動で割り当てられます。ボードシェープ内のどこかをダブルクリックし、Board Region ダイアログを開きます。そして、デフォルト名を変更します。このデフォルトのボード領域には、自動でデフォルトの Board layer stack が割り当てられます。デフォルトの Board layer stack は、Layer Stack Manager で名称が付けられることに注意してください。

ボードは、Board Planning Mode (View » Board Planning Mode, ショートカット: 1) へ切り換えてから Split Lines (Design メニュー) を定義し、領域で分割できます。詳細については、Defining Board Regions and Bending Lines のアーティクルを参照してください。

レイヤスタックの資料

Main Article: レイヤスタックの資料

資料は、設計プロセスの鍵となる部分で、特にリジッドフレキシブル デザインのような複雑なレイヤスタック構造のデザインで重要です。これに対応するために、Altium Designer にはLayer Stack Table 機能が含まれています。これは、ワークスペース内のボードデザインと一緒に配置します (Place » Layer Stack Table)。Layer Stack Table の詳細は以下です:

  • デザインで使用した層
  • 各層に使用した材料
  • 各層の厚さ
  • 比誘電率
  • 各スタックの名称と、そのスタックに使用した層

また、Layer Stack Table には PCB の optional map を含めることができます。これは、様々なレイヤスタックがボードの領域へどのように割り当てられているか確認できるボードの外形です。map は、必要な場合、拡大縮小、または非表示にできます。

Layer Stack Table は、デザインに使用した全てのレイヤの詳細な資料を提供するために使用します。マップは、表の下に含まれることに注意してください。

ドリルペアの設定

複数のレイヤスタックのデザインで、ドリルペアは各スタックに定義します。そして、ドリルペアは Layer Stack Manager で設定します。

ドリルペアを定義するには、以下を実行します:

  1. Layer Stack Manager の下部でスタックを選択します。
  2. Drill Pairs ボタンをクリックして Drill-Pair Manager を開きます。
  3. そのスタックのドリルペアを定義します。
  4. デザインの各スタックについて、このプロセスを繰り返します。

スタックのドリルペアを定義するには、スタックを選択してから Drill Pairs ボタンをクリックします。

ドリルテーブルの配置

Main Article: Live Drill Drawing Table

Altium Designer では、ドリルテーブルを配置する(他の設計オブジェクトと同じように配置する)機能があります。その表には、指定したレイヤペアに必要なドリル情報が表示されます。また、ドリルテーブルは、デザインで使用した各レイヤペアを配置する必要があります。

4 つのドリルテーブル(リジッドフレキシブル デザインで定義したドリルペア)を配置した例。レイヤペアを識別するために、表題がそれぞれに追加されています。
You are reporting an issue with the following selected text and/or image within the active document: